在留資格「永住者」(永住者ビザ)が許可されるための法律上の要件について、説明します。
(※以下の要件はあくまでも法律上の要件です。永住者ビザの許可不許可の判断においては、法務大臣の裁量もありますので、一律に判断されるわけではありませんので注意して下さい。)
ただし、その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、次の各号に適合することを要しない。
一 素行が善良であること。
二 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。
この条文からすると、永住ビザの法律上の要件としては、以下の3つの要件があることになります。
➀素行が善良であること(素行善良要件)
➁独立して生活していけるだけの資産や技能があること(独立生計要件)
➂その者の永住が日本の利益に合致すること(国益適合要件)
この3つの要件のうち、「日本人の配偶者や子」、「永住者や特別永住者の配偶者や子」である外国人の方が永住ビザの申請をする場合には、➂だけが要件となります。
ただし、➂の要件を満たすかどうかの判断において➀➁と同じ内容が審査されます(下記「国益適合要件」のところで説明しています)。
そして難民の認定を受けている外国人の方が永住ビザを申請する場合には、➀と➂が要件となります。
それ以外の外国人の方が永住ビザを申請する場合には①➁➂すべてが要件となります。
以下では各要件について説明していきます。
目次
素行が善良であること(素行善良要件)
法務省のガイドラインでは、素行善良要件は、法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることを意味します。
具体的には以下の3つの[emphasis]どれにもあてはまらない[/emphasis]ことが必要です。
1.日本の法令に違反して、懲役、禁錮または罰金に処せられたことがある者
懲役、禁錮、罰金に処せられたとは、実刑だけではなく執行猶予が付いた場合も含まれます。
ただし、刑の執行が終わったり、執行猶予期間が無事過ぎた場合には、その後一定の期間が経過すれば、これにはあてはまらないことになります。
2.少年法による保護処分が継続中の者
ここでいう保護処分とは、保護観察所の保護観察と少年院送致をいいます。
保護観察中であったり、少年院にいる間は永住ビザは認められません。
3.日常生活または社会生活において、違法行為または風紀を乱す行為を繰り返し行うなど、素行善良と認められない特段の事情がある者
これは、上のAのような重い犯罪ではなく軽い法令違反であってもそれを繰り返し行っている場合や、地域社会に大きな迷惑をかける行為を繰り返し行っているといったような人があてはまります。
例えば以下のような行為です。
- 道路交通法違反を繰り返している
- 万引きの前歴がいくつもある
- 資格外活動許可を得ているが週28時間を超えて就労している
このような場合は素行が善良とはいえないと判断されますので、注意が必要です。
独立して生活していけるだけの資産や技能があること(独立生計要件)
[colwrap][col73] これは、簡単にいうと、生活保護を受給しておらず、現在も将来も自分で生計を立てていけると認められることが必要だということです。この要件は必ずしも永住ビザを申請する本人自身に必要となるのではなく、もし申請人が結婚している場合などでは、その世帯としてきちんと生計を立てていけると認められれば、この要件はクリアされます。
[/col73][col37][/col37][/colwrap] 例えば、「定住者」ビザから「永住者」ビザを申請する場合において、生活保護を受けている状態であれば、絶対とはいえませんが、不許可となる可能性が高いです。
また、就労ビザから「永住者」ビザを申請する場合においては、これも絶対とはいえませんが、年収が300万円より少ないケースでは不許可となる可能性があります。
その者の永住が日本の利益に合致すること(国益適合要件)
国益適合要件を満たしているといえるためには、以下のすべてをクリアしていることが必要です。
⑴原則として引き続き10年以上日本に在留していること
⑵納税義務等公的義務を履行していることを含め、法令を遵守していること
⑶現に有している在留資格について入管法施行規則に規定されている最長の在留期間をもって在留していること
⑷公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
⑸著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められること
⑹在留特別許可または上陸特別許可を受けた者にあっては、一定期間以上引き続き日本に在留していること
⑺原則として公共の負担になっていないこと
以下でそれぞれの要件について説明します。
引き続き10年以上日本に在留していること
原則
在留資格が途切れることなく、引き続いて10年以上日本に在留していることが必要です。
また、この期間のうち、就労系のビザや居住系のビザ(日本人の配偶者、永住者の配偶者、定住者)で直近5年以上継続して日本に在留していることが必要です。
なお、この10年以上の期間中に、再入国許可を受けて一時的に海外に行った場合には引き続き在留していることになります。
再入国許可を受けていなかったり、途中で再入国許可が失効した場合には、引き続いてとはいえなくなります。
例外
- 申請人が日本人、永住者、特別永住者の『配偶者』の場合は、実体をともなった婚姻が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していればOKです。
- 申請人が日本人、永住者、特別永住者の『実子または特別養子』の場合は、引き続き1年以上日本に在留していればOKです。
- 申請人が「定住者」ビザを有する者については、「定住者」ビザを付与された後、引き続き5年以上日本に在留していればOKです。
- 申請人が難民の認定を受けた者の場合、認定後引き続き5年以上日本に在留していればOKです。
- 申請人が外交、社会、経済、文化等の分野で日本国への貢献があると認められる場合は、5年以上日本に在留していればOKです。
- 地域再生法に基づく地域再生計画の区域内に所在する公私の機関において、一定の告示特定活動によって日本国への貢献が認められる者については、引き続き3年以上日本に在留していればOKです。
- 高度専門職ポイントを70点以上有する者で一定の条件を満たす場合は、3年以上継続して日本に在留していればOKです。
- 高度専門職ポイントを80点以上有する者で一定の条件を満たす場合は、1年以上継続して日本に在留していればOKです。
納税義務等公的義務を履行
納税義務等公的義務を履行しているというのは、税金(所得税や住民税)を[emphasis]全額[/emphasis]支払っているということです。
また、税金だけではなく健康保険料や年金についても[emphasis]全額[/emphasis]支払っていることが必要です。
これらを一部だけしか支払っていない場合は、公的義務を履行しているとはいえませんので、永住ビザは原則として不許可になります。
なお、永住ビザを申請する外国人の方が、どなたかの扶養に入っている場合には、その扶養者の方が税金・健康保険料・年金を全額支払っていることが必要とされています。
最長の在留期間をもって在留していること
現に有している在留資格の在留期間が最長の在留期間(ほとんどが5年)であることが必要です。
ただし、これについては当面の間は「3年」の在留期間であれば、最長の在留期間であるものとして取り扱われています。
(以前は3年が最長の在留期間だったため)
なお、3年の在留期間が付与されている外国人の方とその家族で「家族滞在」ビザをもっている方が同時に永住許可申請をする場合には、その「家族滞在」ビザの在留期間が1年であってもOKです。
公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
感染症予防法で定める一類感染症、二類感染症、指定感染症、新感染症にかかっている患者の方や、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤などの薬物中毒者等は、公衆衛生上の観点から有害となるおそれがあるものとして取り扱われます。
著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められること
著しく公益を害する行為をするおそれがあるかどうかは、現在や過去の状況などから総合的に判断されます。
具体的には、以下のような事実があれば著しく公益を害する行為をするおそれがあると判断される可能性があります。
1.日本の法令に違反して、懲役、禁錮または罰金に処せられたことがある
(ただし、刑の執行が終わったり、執行猶予期間が無事過ぎた場合には、その後一定の期間が経過すれば、これにはあてはまらないことになります)
2.少年法による保護処分が継続中である
3.日常生活または社会生活において、違法行為または風紀を乱す行為を繰り返し行っている
これらは上記の素行善良要件と重複したものとなっています。
したがって、「日本人の配偶者や子」、「永住者や特別永住者の配偶者や子」である外国人の方であっても、結局素行善良要件が満たされていることが必要だということです。
在留特別許可または上陸特別許可を受けた者
- 再入国許可期限の失念等により上陸特別許可を受けた日から引き続き1年以上日本に在留していること
- 在留期限の失念等により不法残留し在留特別許可を受けた日から引き続き1年以上日本に在留していること
- 1や2以外で在留特別許可または上陸特別許可を受けた日から引き続き3年以上日本に在留していること
公共の負担になっていないこと
公共の負担になっていないことというのは、具体的には生活保護を受けていないということです。
これは、上記の独立生計要件と同じような内容が国益適合要件として審査されるということです。
ただし、生活保護を受給しているだけで必ず永住許可が不許可となるということでもありません。
生活保護を受給していることに合理的な理由が認められるときは、永住ビザが認められることがあります。
例えば、高齢、身体障害または病気などで明らかに働くことが困難だと認められるような場合です。
まとめ
以上、永住者ビザが認められるための法律上の要件として、➀素行が善良であること(素行善良要件)
➁独立して生活していけるだけの資産や技能があること(独立生計要件)➂その者の永住が日本の利益に合致すること(国益適合要件)について説明いたしました。
結論的にいえば、難民認定されている方以外の方は、基本的にはこの➀➁➂の要件を満たさなければ永住ビザは許可されないということになります。
ただし、永住ビザを申請するすべての方が一律に審査されるわけではないので、個々の事情によって許可不許可が審査されます。
したがって、これから永住ビザを申請しようと考えている方や、申請したけれど不許可になってしまった方は一度詳しい専門家にご相談されることをおすすめいたします。