ビザの申請をしたけれども、残念ながら不許可・不交付という通知が来た場合、再申請をするにあたっては入国管理局に不許可・不交付となった理由の説明を聞きに行くことが重要となります。
ここでは、この理由説明を聞く際のポイントについてお伝えいたします。
(入管に理由を聞きに行く前に、まずは不許可・不交付となった理由の仮説を立てることが必要です。必ず仮説を立てたあとに理由説明を聞きに行って下さい。)
目次
不許可・不交付理由の説明は入管の義務ではない
どのようにして入管に不許可・不交付理由を聞くのかですが、その前にまず、なぜ入管が不許可・不交付理由を教えてくれるのか、その根拠は何かについて知っておいた方がいいと思いますので、簡単にご説明いたします。
行政手続法の適用除外
入国管理局が行う出入国管理業務は、いうまでもなく行政手続のひとつです。
行政手続きに関して定めた行政手続法という法律では、原則として申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対してその理由を明示しなければならないと定められています(行政手続法8条)。
しかし、この行政手続法は「外国人の出入国、難民の認定又は帰化に関する処分及び行政指導」については同法の主要な部分(8条も含まれます)の適用を除外しています。
これは、出入国管理に関する処分は国家の主権(簡単にいうと、日本が独立国として他国から意思に反する制限を受けないという権利)にかかわる性質のものだからです。
したがって、入国管理局がビザの申請に対して不許可や不交付の処分をしたとしても、法律上はその理由を明示しなくてもよいということになります。
入国・在留審査要領上の義務
もっとも、入管が外国人の入国・上陸・在留申請を審査する際のガイドラインである「入国・在留審査要領」では、不利益処分をする場合は申請者に対して、法令の定めるいずれの要件に適合しないのかを明示しなければならないとされています。
この審査要領が不許可・不交付の理由を口頭で説明する根拠と考えることもできますが、実務上はそう解釈されていません。
なぜなら、不許可・不交付通知書に一応その理由が書かれていますので、それによってこの審査要領でしなければならないとされている明示は行われている(義務は果たしている)、といえなくもないからです。
ただ、不許可・不交付通知書の理由というのは、ごく一般的な理由しか書かれていませんので、通常はそれだけを見ても誰も明確な理由はわかりません。
そこでその理由をより詳しく説明するために口頭での理由説明がなされていると思われるのですが、これはあくまで審査要領で定められた義務ではないと考えられています。
結論
このあたりは微妙な解釈にもなってくると思います。
ただ、いずれにしても不許可・不交付理由を聞く側としても確固たる聞く『権利』があるとまではいえない部分があります。
したがって、入管が口頭で理由を説明するのが当たり前だという感覚で聞きに行くべきではないということだけはわかっておく必要があると思います。
不許可・不交付理由説明の聞き方
では、どのように不許可・不交付理由を聞きにいけばいいのかについて、具体的なポイントをご説明いたします。
POINT1.申請した地方入国管理局に直接出向く
不許可・不交付理由の説明は通常、口頭で行われます。
したがって、ご自身が申請した地方入国管理局に直接出向いて理由を聞きます。
不許可・不交付理由の説明は基本的に1回限りしか行われませんので、不許可・不交付の通知書や身分証だけでなく必ずメモ帳やノートも持参して、審査官の説明をメモできるようにして下さい。
なお、当事務所にご依頼いただいた場合は事前質問シートを作成いたしますので、同行サービスではない場合はそのシートを持参して入管に出向いていただきます。
POINT2.聞いている間は怒ったり弁解したりしない
前述のように、不許可・不交付理由の説明は入管の義務ではありません。
また、理由を聞く目的は再申請で許可を取得できる可能性を探るためです。
したがって、理由を聞く際には、決して感情的にならずに怒ったりしないようにして下さい。
また、理由を聞く場でいくら弁解をしても不許可・不交付の決定が変わることはありません。
したがって理由を聞く場では弁解をするのではなく、どうすれば再申請が可能かを聞き出す姿勢で望んで下さい。
POINT3.不許可理由のすべてを聞く
説明された理由以外にほかに理由がないかどうかを必ず聞くようにしてください。
あなたが不許可になった理由はひとつとは限りません。
例えば、Aという要件がクリアされてはじめてB・Cという要件が審査される場合において、もしあなたの申請内容がAだけでなくBにもCにも問題があったとします。
そのような場合にはAという要件がクリアされなかったために、B・Cが審査されていない可能性があります。
にもかかわらず直接の不許可理由であるAという理由しか聞いていなければ、Aだけがクリアされれば再申請で許可を取得できると勘違いしてしまって、Aだけがクリアされた再申請をしてしまいます。
そうなると、当然今度はBがクリアされていないままなので、今度はBを理由としてまた不許可となる可能性があります。
また、入管の担当官はこちらが聞かなくても親切丁寧にすべての不許可理由を教えてくれるとは限りません。
さらにいうと口頭で理由を説明してくれる担当官が実際にあなたの申請内容を審査した担当官とは異なることもあります。
したがって、不許可・不交付理由を聞く際には、説明された理由以外に不許可・不交付となりうる理由がないかどうかを必ずこちらから聞くようにして下さい。
POINT4.再申請によって許可される可能性を聞く
すべての不許可・不交付理由を聞くことと関係しますが、どうすれば再申請によって許可を取得できる可能性があるのかを必ず聞くようにして下さい。
また、現状ではどのような再申請をしても許可を取得することが難しいという場合は、他に解決策がないのかも聞いて下さい。
ポイントはできるかぎり具体的に解決策を聞くことです。
POINT5.入管の事実判断が間違っていることが判明した場合
もし申請した内容に関して、こちらの伝えたかった事実がうまく伝わっていないことが判明したり、入管の捉え方が明らかに間違っていたりしたことが判明した場合は、そのことを丁寧に説明して下さい。
そして、再申請においてどのような伝え方や立証をすれば許可される可能性があるのかを聞くようにして下さい。
まとめ
以上、不許可・不交付理由説明の聞き方をお伝えいたしましたが、いかがだったでしょうか?
もしかしたらうまく理由を聞きに行く自信がないと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
また、万全の体制で理由を聞きに行っても、結果的にすべての理由を完璧に聞けるとも限りません。
したがって可能であれば、入管に理由を聞きに行く前に一度専門家の方に相談をしてみるのがいいと思います。
入管に同行してくれる行政書士もいますので、日本語に自信がない方には心強いサービスだと思います。