日本で会社を設立して1年以上の在留期間の経営・管理ビザを取得するためには、先に会社を設立して登記まで済ませていること(登記事項証明書の提出)が必要です。

しかし、平成26年に閣議決定された規制改革実施計画を踏まえて入管法施行規則が改正され、平成27年4月1日からは一定の場合には会社設立前(登記前)であっても在留期間4か月の経営・管理ビザを取得することができるようになりました。

 

4か月の経営・管理ビザが新設された背景

法務大臣が外国人の在留管理に必要な情報を継続的に把握する制度を構築するために、平成21年の入管法改正によって新たな在留管理制度が導入されることになり、それにともなって外国人登録制度が廃止されました。

外国人登録制度の下では、90日の短期滞在ビザで日本に入国し、その間に外国人登録をして印鑑登録と銀行口座開設をして会社を設立することができました。

しかし外国人登録制度の廃止にともなって住民基本台帳制度も変わり、住民登録することができる外国人は中長期在留者などに限られるようになりました。

したがって、短期滞在のビザでは住民登録や印鑑登録ができず、銀行口座も開設できないので短期滞在期間中に会社を設立することができなくなりました。

そのため外国人の方が一人で会社を設立して経営・管理ビザを取得することはできず、必ず日本での協力者が必要になってしまうことになりました。

そこで、会社を設立する準備を行う意思があることや会社の設立がほぼ確実に見込まれることが提出書類から確認できた外国人については、会社設立前であっても4か月の経営・管理ビザを取得することができるようになったのです。

なお、なぜ4か月かというと、3か月以下の在留期間が決定された者は住民登録ができる中長期在留者に該当しないこととされているため(入管法19条の3⓵)、中長期在留者として住民登録ができる期間の最短が4か月だからです。

 

4か月の経営・管理ビザ申請に必要なこと

4か月の期間の経営・管理ビザを申請するにあたっては、申請人である外国人が会社を設立する準備を行う意思があることや、会社の設立がほぼ確実に見込まれることを証明する必要があります。

したがって、これらを証明できる書類の作成が必要となります。
(なお、経営・管理ビザ取得のための要件は経営・管理ビザの要件その1経営・管理ビザの要件その2で解説しています)

事業計画書の作成

事業の安定性・継続性を証明するために、詳細な事業計画書の作成が必要です。

事業計画書には、単なる営業内容や取扱品目、売上見込み等だけではなく、商品仕入れルート、販売ルート、特殊なノウハウや人脈の確保、販売価格の合理性、収支見積もりなどを具体的に記載することが必要です。

定款の作成

設立しようとする会社の事業目的や資本金、役員などを定めた定款の作成が必要です。

なお、定款の認証までは必ずしも必要ではありません(定款の認証にはそもそも印鑑登録証明書が必要となる)が、母国の印鑑証明制度やサイン証明によって認証手続きをすることは可能です。

事業所の確保

開始しようとする事業の事業所を確保できることの証明が必要です。

賃貸物件の場合は原則として必ずしも賃貸借契約の締結に至っていなくてもかまいません。
ただし、もし4か月の期間の経営・管理ビザを取得したあとには賃貸借契約を締結する必要がありますので、実際上は貸主との賃貸借契約の合意は必要ですし、入管によっては賃貸借契約をしていることを求められる場合もありますので注意が必要です。

この点、後述するように外国人の方が日本での協力者なしに経営・管理ビザの申請をしようとする場合、現実的には事業所の確保は困難です。

 

経営・管理ビザ取得の流れ

4か月の経営・管理ビザは、入国後に資本金の払込みや登記をして会社設立のための手続きを完了させたあとに、在留期間の更新許可申請をすることが予定されたものです。

在留期間の更新許可申請をするまでのおおまかな流れは以下のとおりです。

1.短期滞在で日本に入国

2.会社設立の準備

3.経営・管理ビザ(4か月)の認定証明書交付申請

4.経営・管理ビザ(4か月)取得後に住民登録・印鑑登録

5.銀行口座の開設

6.資本金の払込

7.会社設立・登記

8.法人口座の開設

9.経営・管理ビザの期間更新許可申請

 

4か月の経営・管理ビザの問題点

問題点1.事業所や住居の確保が困難

日本に協力者がいない状況で、経営・管理ビザを申請する場合、外国人の方にとっては、事業をするための拠点や住居の確保が事実上困難です。

なぜなら、事業所や住居は通常賃貸によって確保しなければなりませんが、日本での不動産賃貸では多くの場合、年単位での契約になっていたり、連帯保証人が必要だったりするので、日本での協力者なしで外国人の方だけで不動産の契約をすることが非常に困難だからです。

問題点2.銀行口座の開設が困難

たとえ4か月の経営・管理ビザを取得できて、在留カードと印鑑証明書が用意できたとしても、実際上は滞在期間が6か月未満の外国人に対して口座の開設を認めてくれる銀行は少ないです。

したがって、4か月の経営・管理ビザを取得できたとしても、その後に会社を設立(登記)するには4か月のビザを有する外国人でも口座の開設をしてくれる銀行を探さなければなりません。

 

まとめ

以上のように、4か月の経営・管理ビザには外国人の方にとってメリットとなる部分もありますが、現実的には、その後の経営・管理ビザ更新許可申請が難しいという面もあります。

したがって、可能な限り日本での協力者を得て、最初から1年の経営・管理ビザの申請をすることをおすすめいたします。

ただ、どうしても4か月の経営・管理ビザの申請をお考えの方は、行政書士などの専門家にご相談されると最終の期間更新許可申請までをサポートしてもらえますので、安心なのではないでしょうか。